もう女じゃないなんて、言わせない
「……え?」

「抱きたくてたまんないけど、今夜はちゃんと帰す。優香を“軽い女”にしたくないから。」

その一言に、私は言葉を失った。

何も言えなくなって、唇を噛んだ。

――こんなに優しい断られ方、ある?

嬉しいのか、悔しいのか、泣きたいような、笑いたいような気持ちで、私は黙ったまま、

ただ悠真の横に立ち尽くしていた。

そして、少し遅れて、胸の奥がきゅうっと熱くなる。

この人、本当に私を、大事にしようとしてくれてるんだ。

店を出ようとしたその時だった。

悠真が、ふと足を止めた。

お店の入り口の横、死角になった小さなスペース――
通りからも、店の中からも見えない場所。

「ちょっと、ここ……」

言い終わらないうちに、悠真が私の腕を引いた。
そして、そのまま――唇が重なった。

「ん……っ」

驚く暇もなかった。
しかも、この前のキスとはまるで違う。
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