もう女じゃないなんて、言わせない
一度だけじゃなく、何度も角度を変えて、深く、じっくりと、まるで貪るように――

舌が触れ合い、吸い上げられるたび、体の奥がぞわぞわと熱くなっていく。

「ふぁ……」

喉の奥から、自然に漏れた声。

――まさか、キスだけで感じるなんて。
自分でも驚いた。

腰が少し、力を抜かれてふらついたその時。
悠真が唇を離し、ぽつりと言った。

「……キスで一回、15,000円。」

「はぁ⁉」

思わず素っ頓狂な声が出る。

「嘘だよ。そんな高い値段設定のキスがあるか。」

いたずらっぽく笑って、悠真は手を伸ばした。

そのまま、私の手を握って、ぎゅっと引いた。

「さ、行こう。……次は抱くから。準備だけしてきて。」

その言葉に、胸がどくん、と鳴る。

もう、ぐらぐらだ。
さっきまでの余裕も、軽口も、全部崩されそう。

それでも私は、握られた手を離さなかった。

この人に引っ張られていく未来なら、
少しくらい、覚悟してみてもいいかもしれない。

歩き出した二人の足音が、夜の街に溶けていった。
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