もう女じゃないなんて、言わせない
……え、ちょっと待って。
コース料理だけで1万円超えてるんだけど。

前菜、スープ、魚料理、肉料理、デザート……全部込みとはいえ、ワインなんか頼んだら軽く3万は超える。

気取らない居酒屋で3500円の割り勘をしていた日々が、遠い昔のように思えた。

「悠真……」

小声で名前を呼ぶと、彼はメニューから目を上げた。

「無理してない? 今日……」

「えっ? なんで?」

「……なんていうか、私を抱くことに躍起になってるっていうか……」

自分でも、なんて言い方をしてるんだろうと思った。
でも、どうしても気になった。

今の私には到底出せない金額を、さらりと払おうとする彼。

その背景にある“意図”が見えなくて、怖くなった。

すると悠真は、少しだけ目を細めて、笑った。

「別に。通常運転ですよ?」

そう言って、何事もないようにウェイターを呼び、二人分のフルコースと、白ワインのボトルをさらりと注文した。
< 43 / 54 >

この作品をシェア

pagetop