もう女じゃないなんて、言わせない
その流れるような所作に、私は何も言えなくなる。

けれど次の瞬間、悠真はふと真面目な声で言った。

「……俺が起業したのって、もちろんやりたいこともあったからだけど、こういう時に、ちゃんと金を出せる男になりたかったからだよ。」

静かに、でも確かに届いた言葉。

「好きな女に、“大丈夫だよ”って堂々と言える男でいたかった。見返りとか、そういうのじゃなくてさ。」

私は、胸の奥を掴まれたような気がした。

この人は、私を“抱く”ためにじゃなく、“守る”ために、こんな夜を用意してくれているんだ。

「……そんなこと言われたら、泣くんだけど。」

「泣かないで。ワインがしょっぱくなるから。」

ふざけて笑うくせに、その目は、ちゃんと真剣だった。

この夜が、私にとってどれほど大きな意味を持つかを、悠真は、もう全部わかってるのかもしれない。

グラスに注がれたワインを、そっと口に運ぶ。

芳醇な香りが広がって、胸の奥が温かくなる。

この人を、信じてみてもいいかもしれない。

今夜だけじゃなく――これからも。
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