もう女じゃないなんて、言わせない
東條は、少しだけ真面目な目で私を見た。

「すごくなんかないよ。当たり前だろ。」

東條が肩をすくめる。

けれど私には、その“当たり前”が遠く感じられた。

そうか。当たり前か。

まだ40歳。少し前まで30代だったのに。

でも、いつの間にか年齢に縛られていた。

私は、まだ“女”なのだろうか。

「……もう、一年もしてない。」

ぽつりと零したその言葉に、東條が一瞬動きを止めた。

「あ? 恋愛?」

「恋愛どころか、デートも。」

そう言いながら、グラスの中の氷を指先でかき回す。

そうだ。
ちょうど最後のデートが、あの夜だった。

東條と行ったイタリアンレストラン。

オレンジの灯りが柔らかくて、前菜もワインも美味しくて、東條はいつもより少しだけよそ行きの顔で、私を見ていた。

あの時、私は覚悟していた。

「付き合おう。」

その言葉がくると思っていた。心の準備もしていた。
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