もう女じゃないなんて、言わせない
「我慢してる。」

「へえー。女ってたまんないの。羨ましいな。」

東條は笑いながら言うけど、私はもう笑えなかった。

──どこかの誰かさんみたいに、

定期的に性処理できる相手がいるわけじゃない。

抱かれたくないわけじゃない。

でも、ただ抱かれるだけの女にはなりたくない。

その狭間で、何度も葛藤してきた。

年を取るって、きっとそういうことなんだと思う。

「……そういうふうに、自分の欲望に正直になれるの、男の特権だよね。」

「なんだよ、それ。」

「だって、女が“抱かれたい”って言えば、軽いとか、寂しいとか、下品とか。どうせそう思われる。」

「思わねぇよ、俺は。」

即答だった。

私は彼を見る。目が合う。逸らせなかった。

「俺は……むしろ、そう言ってくれた方が、嬉しいけどな。」

その声は、いつもよりずっと低かった。

私はグラスを置いた。少しだけ、手が震えていた。
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