「ふしだら聖女め!」と言われて辺境に追放されましたが、子どもたちとほっこり幸せに暮らします(ただし、聖騎士団長が待ち伏せしていた!)
「そんな見え透いた嘘を……」
 ヴィンラントの声に苛立ちが滲む。
「僕と婚約しておきながら、他の男と身体を重ねたその結果がその子らだろ?」
 どうやらヴィンラントは、子どもたちをリデーレの実子と決めつけているらしい。
「ですから、ミーティアもアラケルも兄の子です。兄嫁に逃げられ、兄は騎士団の遠征で王都を離れるからって、私が預かっているだけです」
 リデーレの兄、デルクは王国騎士団に所属する騎士だ。妻に去られ、子育てがままならない兄に代わり、リデーレが姪と甥の面倒を見ている――それだけの話だった。
「そんな話、信じられるわけがない。聖女リデーレに隠し子がいたと、他の聖女らも言っているし聖堂の侍女たちも口をそろえて言っている」
 やれやれとでも言いたげに、ヴィンラントは肩で息をついた。
 やれやれと言いたいのはリデーレのほうだ。真実を告げても、相手が耳を貸さないのであれば、話は平行線をたどるだけ。
 だが、彼との婚約解消ができるのなら、この波に乗るしかない。ふしだら聖女という汚名を着せられても、リデーレにとって婚約解消という結果は魅力的なものだ。
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