「ふしだら聖女め!」と言われて辺境に追放されましたが、子どもたちとほっこり幸せに暮らします(ただし、聖騎士団長が待ち伏せしていた!)
 その前に婚約解消できたのだから、よかったのかもしれない。準備が始まってからの解消では、目も当てられなかっただろう。
 そのとき、リデーレのローブの裾をミーティアがつんつんと引っ張った。
「ミーティア。もう少しだから、お利口さんにできるかしら?」
「うん。でも、リディお姉ちゃん、よかったね」
 天鵞絨色の髪を二つに結んだミーティアは、子どもらしい愛嬌のある笑顔を作った。
「思い込みの激しい男と付き合うのはたいへんだよって。パン屋のマーサが言っていたもん」
 さらにミーティアはヴィンラントに向かって、小さな人差し指を突きつけた。
「だ、だめよ、ミーティア。人を指差してはいけないって、教えたでしょう?」
 慌てたリデーレは、片手でアラケルを抱っこしつつ、空いた手でミーティアの右手をパシッと捕まえる。
「お目汚しを失礼いたしました。王太子殿下」
 両手が塞がったまま、リデーレはぎこちなく腰を折って礼をした。だが、時すでに遅し。ヴィンラントは顔を真っ赤にして、わなわなと震えている。
「おじさん。おトイレ、がまんしてるの?」
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