「ふしだら聖女め!」と言われて辺境に追放されましたが、子どもたちとほっこり幸せに暮らします(ただし、聖騎士団長が待ち伏せしていた!)
 ミーティアの無邪気な声に、部屋の隅からくすくすと笑いをこらえる気配がした。この部屋にはヴィンラントに仕える騎士らもいるというのに、リデーレはすっかりとそのことを失念していた。
「不敬だ。まず、僕はおじさんではない。さすが、ふしだら聖女の娘だな。年は、いくつだ?」
「五歳だよ。ミーは五歳になったよ」
 ミーティアは胸を張って堂々と答える。
「ふん。五歳になったのであれば、分別もつく年頃だろう。いったい君は、娘にどういった教育をしているんだ。母親、失格だな」
「ミーのママはいなく……んごっ」
 これ以上ミーティアに好き勝手に話されたらたまったものではないと、リデーレは慌てて彼女の口を塞いだ。
「申し訳ありません。正式な謝罪は、子どもたちがいないときにでも」
「正式な謝罪など不要だ。ふしだら聖女と躾のなっていないその子。君たちはこの王都から出ていけ。追放だ」
 ぎょっとしてリデーレは目を大きく見開いた。
 追放――それは婚約解消以上の衝撃的な言葉だ。
 ヴィンラントの大きな声に驚いたのか、腕の中のアラケルも「ふぇっ、ふぇっ……」と変な声をあげ始める。
 部屋の隅に控える騎士たちの間にも、ざわめきが広がった。
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