√スターダストtoらぶ

愁真side

彼女に触れられた右手がまだ熱を持っている。

いつメンと別れ、電車に揺られながら俺は自分の手のひらを見つめていた。

手を差し出して握り返された回数はもう数え切れないほどあるが、こんなにも温かかったことはない。

手を開いたり閉じたり。

残る感覚に胸がずんっと重くなる。

こんな感情になるのはあの日以来だ。

ガキの頃の真夏のクソ暑い日。

あの公園で俺の目の前に差し出された

小さくて柔らかなあの子の手を握ったあの日…。

あの日以降

その子には会えなくて

でも忘れられなくて

手を握れば分かるかもしれないなんて

そんな淡い期待を抱きながら

こんなに大きくなるまで

…汚くなるまで

ずっと捜していた。


「次は八王子、八王子。お出口は右側です」


最寄駅の名が聞こえて俺は慌てて立ち上がり降車ドアの前に移動した。

会社帰りのサラリーマンや塾帰りのちびっ子と共に降りていく。

改札を抜けたところでスマホがブーブー鳴った。

見なくても分かる。

次いつ遊べるかっていう女の誘いだろう。

誰がどいつかなんて全然識別出来ていないっていうのに、少し優しくしてやるだけで嬉しそうにするのが、なんていうか…やりきれない気持ちになる。

こいつらは俺の何を見てるんだって、

何も見えてないくせに仲間に自慢してるんだろうなって、

そんなしょうもないことを感じてしまう。

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