√スターダストtoらぶ
「まず、今までの交際歴を聞かせて下さい」

「え?」

「あはは。結婚相談所みたいだなって思いました?でも占う上で必要なことなので聞かせていただけませんか?」

「あ、うん」


俺は嘘偽りなく答えた。

声をかけられれば自分の許容範囲内で付き合うことはあっても本気で好きだと思った人はいないこと。

全て初恋の人を探すためにしていたこと。

どんな理由であれ、女性を傷つけてきたのは確かだということ。

反省していること。

今思っていること、

考えていること、

全て話した。

話さなければならないって思ったから。

誰よりも高橋さんを大事に思っているであろう親友のこの子に。


「…素直な人、なんですね」


俺が話し終えると、彼女はそう静かに呟いた。

素直…なんて

初めて言われた。


「自分の気持ちに嘘はつけない。本気で愛せる人を捜すために身も心も犠牲にした。わたしはあなたをそう解釈しました。そして、それは…らぶも同じ」

「同じ?」

「らぶから聞いたことあるかもしれませんが、らぶは極度の恋愛体質な上に俗に言う変な人に好かれやすいんです。それで中学時代色々傷ついてきて、今も人を心から信用出来ないでいるんです。でも、あなたならたぶん分かってあげられる。あたしはそう思います。信じます」


日野森さんが俺を見てにこりと笑って、それから水晶玉を撫でた。


「今夜、あなたには月の導きがあります。運命の糸を手繰り寄せて心からのあなたの気持ちを誠実に伝えれば願いは叶うでしょう」

「今夜…ですか?」

「はい。今夜です。何が起こるかまでは読めませんが」

「分かりました。ありがとう、日野森さん」


立ち上がり踵を返し、黒いカーテンに手を伸ばす。

背中越しに声が聞こえてくる。


「あたし占い師である前にオタクでロマンチストなので運命を信じるんです。だから、その…応援してますから。らぶのこと、頼みます」


俺は大きく頷き、館を後にした。

今夜何が起こるか分からない。

けど、俺にとって大事な夜になるのは何となく分かる。

日野森さんに信用してもらったのだから、それを裏切らないようにしよう。

そう思った。

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