√スターダストtoらぶ
バイト先のコンビニから一番近い公園のベンチにその姿はあった。

この心を占めて、

誰にも渡したくない、

ただひたすらに好きな、

キミの姿が。


「お嬢さん」


あの日もそう言って俺が手を差し出したんだ。

目が合うと、キミは咄嗟にそらした。

秋風が優しく頬を撫でる。

嫌がることはしない。

そう約束したから。

少しずつ、

キミの香りをやっと感じられる距離で、

俺は声をかける。


「隣いい?」


キミは首を真横に振る。

良いわけない。

それは分かってる。

でも、伝えなきゃ始まらないから、

言わせて。


「じゃあ、言うだけ言ったら帰る。今日はありがとう。俺の代わりにバイト出てくれて。文化祭の帰りに寄ったらやっぱり高橋さんが代わってくれたって聞いてさ。お礼しなきゃと思って」

「変なとこ律儀ですよね」


素直の次は律儀、か。

俺自身も知らない俺が垣間見える。

なんだろ、この漢字。

変だな。

こそばゆい。

ひゅーっと風が吹く。

さすがに秋だから肌寒い。

こんなところに長居させるわけにもいかない。

ちょっと前の俺みたいに風邪をひいたら大変だ。

なら、回りくどく言わずに

素直に、言うよ。


「律儀…なんかじゃない。そんなのカモフラージュで、ほんとはただ…ただ高橋さんの顔が見たかっただけなんだよね」

「え?」


何を言ってるんだ、この人は?

そう言いたげな顔をしてる。

そんな顔も…可愛いよ。

俺は思っていたこと、

感じていたこと、

全部伝えようとして、

でもところどころ呑み込んで。

嫌われないように、

約束の範囲内で、なんて。

言葉を繕っていたら、溢れてきて。

制御出来なくなりそうで。

ブレーキなんか取っ払いたい。

このどうしようもない脳内で生まれるだけの

ありったけの言葉を伝えたい。

それだけなのに。

交わらなくて。

俺は背中を向けた。

これ以上は迷惑だから。

抑えようとしたら、

パーカーの裾に小さな重みが加わった。


「どう、した?」


聞いても返事はない。


「俺と話したい?」


キミは首を真横に振る。

でも、それ以上言葉は紡がれない。

言おうか言うまいか、

迷いに迷って、

俺は少し意地悪をした。


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