キラくんの愛は、とどまることを知らない
015
指折り数えて待っていた沖縄旅行。
夢のように素敵なヴィラでの初めての夜……
私はお風呂で一人、いつもより念入りに身体を洗った。ヴィラに置かれたボディソープはとてもいい香りがする。
バスローブの中には、この日のためにヒカリと選んだ勝負下着を装着する。左右が紐の脱がしやすいパンツに、肩紐を外すだけのベビードールだ。
少しやり過ぎな気がしたが、初めて同士なのだからスムーズに脱げるのが一番だ、とヒカリ先生にご指導賜った。
そして、いつもより念入りに歯を磨く。
「お待たせしました、キラくんもどうぞ」
「っ……五分で戻るから! 寝ないで待ってて」
「だ、大丈夫だから、ゆっくりどうぞ」
男の人は簡単でいいな、そんな事を考えながら部屋の灯りを小さくし、窓を開開けてバルコニーに出た。
都会の空では認識する事が出来ないような、ほんのわずかな輝きを放つ小さな星達の数に驚く。
「星って……こんなに沢山あるんだ……」
目の前に広がる星空と、単調に繰り返される波の音が、ここが、自分達の生活する世界とは全く異なる場所であると教えてくれているようだ。
「……ひよ子っ」
本当に五分くらいしか経っていないのではないだろうか……
「もう、髪乾いてないよ」
頭にタオルを引っ掛けたまま、バスローブ姿で私の背後に現れたキラくんは、バルコニーにいる私を部屋の中に引きずり込んだ。
「夜でも外は暑いから───涼しい部屋にいよう」
「なら、キラくんはちゃんと髪を乾かしてください。風引いちゃうよ」
私はベッドに腰掛けたキラくんの頭を、タオルでワシャワシャして、髪の水分を飛ばす。まるで犬みたいだ。
「ひよ子……」
「ん? な〜に〜?」
キラくんは乱雑にワシャワシャする私の手を、パシッと掴んだ。
背中に腕が回され、身体を引き寄せられる。
ほんの少し乱れた私の胸元が、丁度彼の顔の位置にあり、ぽすん、と埋められた。
彼の両手が私のバスローブのリボンを解き、ゆっくりと肩から外されていく。
「……キラくん?」
「ひよ子の胸、見たい。正面から」
私よりもはるかに色香を纏ったキラくんが、甘えるような口調でそんな事を言うものだから、私の心臓は激しく音を立てた。
ストン───と、バスローブが床に滑り落ちる。
目を覆いたくなるような大胆なデザインのベビードールに、一瞬キラくんの動きが止まったような気がしたが、彼はそのまま私の胸を両手で挟み、その狭間に顔を埋めて息を大きく吸って吐いた。
「一生ここに挟まっていたい……」
「ふふっ───なんか可愛いっ……」
いつもは私を優しく包みこんでくれるキラくんが、今は私の胸に甘えている。つい、彼の髪を撫で、その頭を抱き込んだ。
しかし彼はもぞもぞと顔をずらし、胸を揉み込みながら、親指で何かを探している。
探り当てたそれの片方を口に含み、舌先で転がす。もう片方は布越しに親指でくねくねと緩い摩擦を与えてくる。
初めて感じるその刺激に、思わず身体が反応し、自分のものとは思えない甘い声が漏れた。
キラくんは胸の先を咥えたままニヤリと笑みを浮かべ、『可愛い』と余裕たっぷりに呟く。
同じ初めて同士なのに私ばかり……しかしいきなり彼の大事な部分に手を伸ばすわけにもいかない。
視界にチラつくアレを受け入れるためには、私はキラくんに解して貰わないと無理だ。
初心者の私に出来る事といえば、彼の愛撫を素直に感じリラックスして身体を整えるのみ。
恥ずかしい事じゃない。大好きなキラくんが触れてくれているのだから、嬉しい事なのだ……
私は感じるがまま、身体をくねらせキラくんにすがった。
ベッドの上に仰向けに寝かされ、組み敷くようにキラくんが私の上に覆いかぶさる。
愛しむような優しい笑みを浮かべ、彼は私の頬に両手で触れ、唇を重ねた。
舌先で隙間をこじ開けるように口内に入り、私の舌を絡め取っていく。
こんなに深いキスは数えるほどしかした事がないが、そのたびに身体の奥がムズムズと疼くような気がしていた。
今夜はいつもより丁寧でなんだか執拗に感じる。今までは手加減されていたのだろうか。
キラくんを見れば、私と同じように息が上がり、切なげな表情をしている。
───……ああ、この人が好きだ……
「……キラくん、好きっ……大好き……」
気持ちが溢れ出すように口からこぼれる。
「俺も……俺はっ……」
片時も唇を離したくないとばかりに、細切れに言葉を漏らすキラくんの声はどこか切なげで……彼の私に対する気持ちの重みがひしひしと伝わってきた。
「好きすぎて……どうにかなりそう……」
その夜、キラくんは楽しみにしていたプレゼントの包装をリボンから包装紙、箱と、ゆっくり一つ一つ解いていくように、丁寧に私に触れてくれた。
彼を受け入れる時はわずかに痛みがあったが、それはほんの一瞬で、我慢出来ないほどではなかった。
ヒカリ曰く、初めての男は“猿”だから、抱き潰されないように気をつけろ、と言っていたが……
キラくんはその夜、二度吐精しただけで終えて、私を抱き締めて眠りについた。
『明日も明後日もあるから』───と……
私はそれが旅行の行程の事だと思っていたのだが……どうやら違ったようだ。
それからの旅行中、ヴィラで過ごす朝晩の時間は全て、という頻度で私は何度も彼に抱かれた。
でもそれは決して嫌な事ではなく、本当に本当に幸せで愛に溢れた時間だった。
───……もう少し、筋力と体力をつけよう。
そう、心に決めた。