私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
「そんなわけないじゃん」

私は思わずそう言っていた。
だけど――

(しまった)

自分でもわかる。声が震えてた。
目を合わせたくなくて、つい視線をそらす。

顔が熱い。
どんどん赤くなっていくのが、自分でも分かった。

そんな私を、野田はじっと見ていた。
すぐに茶化してくるかと思ったのに、彼は何も言わなかった。

静かで、妙に張り詰めた空気の中。
ふいに、野田が一歩、近づいてきた。

「否定するってことは、気にしてたってことだよな?」

私の言葉を待たず、野田はゆっくりと、でも確実に、距離を詰めてきた。

「俺のこと、意識してほしい」

まっすぐ、真正面から、射抜くような視線。

「……俺はずっと、お前のこと、ちゃんと見てきたから」

心臓が、うるさい。
口を開こうとしても、何も出てこない。

「……逃げんなよ、風花」

会議室のドアの向こうは、いつものオフィスのはずなのに、
この空間だけ、まるで別世界みたいだった。

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