私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
静かな部屋に、その電子音だけがやけに大きく響く。

「……っ、ごめん」

野田はふいに顔をそらし、そっと私の身体から手を離した。
赤くなった頬を隠すように、立ち上がる。

「洗濯、終わったみたいだから、取りに行ってくる」

そう言って、足早に洗面所へ向かった野田の背中。
その姿を、私は呆然と見送った。

……今、キスされてたかもしれない。
いや、それだけじゃなくて――。

胸の奥が、熱い。鼓動が落ち着かない。
でも、不思議と嫌じゃなかった。むしろ……

「……どうしよう……」

ぽつりと、声がこぼれた。

Tシャツ越しに残る、野田の手のぬくもり。
耳元にかかった低い声。
そして、「気持ちいい?」って……あれは、夢じゃない。


しばらくして、乾燥を終えた洋服を持ってきた野田が、少し気まずそうに笑った。

「ほら、乾いた。帰り、送るよ」

その笑顔に、私はようやく息をついた。

「……ありがとう」

受け取った服は、ほんのりあたたかかった。
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