騎士として生きてきた私が、皇子の甘い言葉に落ちるはずがないのに
ある日、ふと気づいた。

いつもなら来るはずの月のものが、来ていない。

「まさか……」

寒気がした。騎士の私が、もし妊娠していたら?

一人で抱えきれず、誰にも相談できなくて、宿舎の部屋で膝を抱えた。

涙が頬を伝う。「どうしよう……どうしたら……」

その時、ドアをノックの音がする。

「セイラ?いるのか?」

レオンの声だった。

彼は心配そうに私の隣へ腰を下ろす。

「なあ、どうかしたのか?」

優しい声だった。それにすがるように、私は打ち明けた。

「赤ちゃんが……できたかもしれないの。」

一瞬で、レオンの表情がこわばった。

「……え?」

私は不安を抑えながら、そっと抱きしめた。

「私、産んでもいい?」

次の瞬間、レオンの腕が私を引き離す。

「ごめん。俺……まだ結婚とか、無理だわ」

その声に冷たさが混じっているのを、私は聞き逃さなかった。

「なあ、子供……諦めてくれないか?」
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