騎士として生きてきた私が、皇子の甘い言葉に落ちるはずがないのに
私はその言葉に、深く頷いた。

その時だった。

「あ、そうそう。今日、新しい騎士団長が着任するんだってよ。」

「えっ?」

私は反射的に問い返した。

騎士団長の着任――その一言が、心の奥をかすかに揺らした。

整列する騎士たちの前に、その人は現れた。

背筋はまっすぐ、目は前だけを見据えている。

堂々とした立ち姿に、私は思わず息をのんだ。

――えっ……。

あの人だ。

「今日より騎士団長を拝命した、アレクシス・グレイフォードだ。この騎士団を、共に支えていこう。よろしく頼む。」

低く、よく通る声。

少年だったあの頃の面影を残しながらも、

その瞳は皇子としての責務を背負った者のものだった。

「よりによって、第3皇子かよ……」

隣でブレンが小声で呟く。

だが私は、ただ呆然と見つめていた。

少年の頃、剣を教えてくれたあの優しい手。

私がはじめて“守られたい”と思った、唯一の存在。
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