甘い独占欲と溺愛で、もう絶対離さない。
いつもより何倍もの時間をかけて、なんとかバトンパスの位置まで歩けた。
だけど、もうすでにあんなにあった差は埋まって、赤組と青組はトラックの三分の一ほど先を走っている。
……もうダメ、かなあ。
「千紘くん、ありがとう……っ」
「んーん」
千紘くんは、私をトラックの内側に座らせてくれた。
そして、右手をさしだす。
「バトン、ちょーだい」
「……ごめんね」
私はおずおずと、千紘くんにバトンを差しだした。
……負けるの、決まっちゃったよね。
なんで転んじゃったんだろう。
足を引っ掛けられるようなこと、私したかなあ。
……なにしちゃったんだろう。
「……大丈夫だ、ゆあ」
私の心情を読み取ったのか、千紘くんは私を見てニカッと笑った。
「あとは任せとけ」
そう言って千紘くんは、風の中へと飛び出した。
きゅん、と心臓が音を鳴らす。
アンカーはトラック一周半を走る。
でもこの差を埋めることなんて。