甘い独占欲と溺愛で、もう絶対離さない。
私の言葉に、彼はポケットからスマホを取り出して電源を入れた。
「……二分前だね」
「……二分前?」
……やば。行かなきゃじゃん。
初日から遅刻して教室入るとか、それこそ変な印象ついちゃう。
「えっと、時間やばそうなので行きます!
ぶつかってしまってすみませんでした」
では、と頭を下げて、私はその場を後にした。
教室目の前だし、遅刻はこれで回避かなぁ。
よかったぁ……。
「待って!」
「……へ!?」
そう安心しきっていたのに、彼の声とともに、手首をつかまれて。
……えっ、何?
私なんかした……?
いや、ぶつかったのは私の不注意で、百パーセント私が悪いんだけど。
許してもらったはずだよね……?
反射的にばっと振り返ると、綺麗で澄んだ瞳をしたあの彼と、バチっと目が合った。
「ハンカチ、落としたよ。君のだよね?」
静かに手を離した彼は、私の赤いハンカチを手に持っていて。
……あれ、なんでこんなところに。
「あっ、そう、です……!」