甘い記憶を溶かしたら
 まさかそのデザインが選ばれるとは、誰が想定できただろう。自分が一番信じられない。

「前からユーザーアンケートにも真面目に目を通して改善提案を出したりもしていただろう!? その丁寧な仕事ぶりも上層部の目に留まっていてな。そこに新商品開発のパッケージデザインが高く評価されてプロジェクトチームから直々のご指名だ! すごいじゃないか!」

 私よりよっぽど舞い上がって鼻高そうな上司にもはやこちらが冷静になる。

「は、はぁ……大変名誉でこ、光栄なお話です。でも私なんかにその務まるとは……」
「どうして! 遠野さんならなにも心配することないじゃないか! 期待してるよ! うちの部署から抜擢されるなんて素晴らしいことだ!」

 ――でた……またこのさすが遠野さん……無理。

 けれどこの状況に無理ですもごめんなさいもない。所詮サラリーマン、そしてデザインは本当に採用されてしまったらしい。

 私は断る術もなく、その新商品開発販売に向けての臨時的な人員動員のデザイン担当として辞令が降りたのだった。
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