甘い記憶を溶かしたら
 戸惑いながらもあっという間にその辞令はやってくる。本社の商品開発部は社内でも優秀であったり、他社からも引き抜かれてきたりととにかく煌びやかなイメージしかない。そんなハイスペック集団の中で地方支社の平社員の私がどの面下げて仕事をすれば良いのだろう。萎縮しかしないなか扉を開けたそこで私は目を見開くことになる。

「遠野さん!? わ~待ってたよ! デザイン案を見た時にどんな子がこれを描いたんだろうってみんなで楽しみにしてたんだよ!」

 そう言って優しい言葉で温かく迎えてくれたのはチーフの鈴原(すずはら)さん。歳は少し上にも見えるが気さくで朗らかな印象は若々しさをアップした。プロジェクトチームはいろんな管轄にチーム分けされていて私はマーケティング戦略部。商品パッケージは売上にも大きく左右される需要なものだ、そのため販売促進を上げるためここでデザインを見直しより良い品に仕上げていくのが主な仕事となる。

「不安なこともあるだろうけどあまり気負わないで。一緒に新商品販売に向けて頑張ろうね!」
「ありがとうございます。至らないところもたくさんあると思いますのでご指導よろしくお願いいたします」
「かたぁ! 遠野さんすごく仕事出来るって聞いてるよ! めっちゃ期待してる!」

 ――またでた……その無駄な期待やめてほしい、無理。

 絶対部長が無駄に私を持ち上げている気がして心の中で憾む。
 
「ちゃんと指導係もつけるからそいつになんでも聞いて頼ればいいよ」
「え?」
「あれ? (すばる)どこ行った?」

 ――スバル……?
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