甘い記憶を溶かしたら
その名前に無駄にドキリとしてしまった。
「あ、昴~! 紹介するからこっち来て~!」
鈴原さんの呼びかける声に恐る恐る振り向くと私はまた目を見開いた。
――嘘。
「どこ行ってたんだよ~遠野さん待たせて~」
「あの。鈴原さんがプレゼン資料の提出日を間違えていたんじゃなかったでしたっけ?」
「あ……」
「なにが来週火曜ですか。火曜でも今日の火曜十時必着ですよ」
冷ややかな声で言い返されている鈴原さんはバツが悪そうな顔で薄く笑いながら私に近寄ってくる。
「そういう時ない? 勘違いしちゃうことあるよね? あるでしょ?」
「は、はぁ……」
同意を求められても困るんだけど。そんな思いを汲んでくれるように目の前のどっからどうみてもシゴデキオーラ全開のその人がまた淡々と言う。
「余裕あるって言ってマジでなんにも仕上げてませんでしたね。ほぼ白紙でしたよ。勘弁してください」
「……うん、ごめん」
さすがに笑えなくなったのかしょぼんと肩を落とす鈴原さんは不謹慎だがちょっと可愛い。
「でも昴が気づいてくれたから助かった! ありがとう! 本当にお前は出来る男だ! 俺のチームにいてくれて良かった! 最高!」
「……」
煽て方がすごくて思わず笑ってしまいそうになる。ここで私が笑える立場にはいないので必死で表情筋を固めていたのに。
「仕上げて出してくれたんでしょ!? 怒られなかったんでしょ!? じゃあもうオールオッケーってことだよね!」
「結果論です。こういう初歩的なミスは気をつけてくださいね、チーフ」
「はい……」
今度は本当にシュンッとおやつを取り上げられた柴犬みたいに落ち込むから……。
「あ、昴~! 紹介するからこっち来て~!」
鈴原さんの呼びかける声に恐る恐る振り向くと私はまた目を見開いた。
――嘘。
「どこ行ってたんだよ~遠野さん待たせて~」
「あの。鈴原さんがプレゼン資料の提出日を間違えていたんじゃなかったでしたっけ?」
「あ……」
「なにが来週火曜ですか。火曜でも今日の火曜十時必着ですよ」
冷ややかな声で言い返されている鈴原さんはバツが悪そうな顔で薄く笑いながら私に近寄ってくる。
「そういう時ない? 勘違いしちゃうことあるよね? あるでしょ?」
「は、はぁ……」
同意を求められても困るんだけど。そんな思いを汲んでくれるように目の前のどっからどうみてもシゴデキオーラ全開のその人がまた淡々と言う。
「余裕あるって言ってマジでなんにも仕上げてませんでしたね。ほぼ白紙でしたよ。勘弁してください」
「……うん、ごめん」
さすがに笑えなくなったのかしょぼんと肩を落とす鈴原さんは不謹慎だがちょっと可愛い。
「でも昴が気づいてくれたから助かった! ありがとう! 本当にお前は出来る男だ! 俺のチームにいてくれて良かった! 最高!」
「……」
煽て方がすごくて思わず笑ってしまいそうになる。ここで私が笑える立場にはいないので必死で表情筋を固めていたのに。
「仕上げて出してくれたんでしょ!? 怒られなかったんでしょ!? じゃあもうオールオッケーってことだよね!」
「結果論です。こういう初歩的なミスは気をつけてくださいね、チーフ」
「はい……」
今度は本当にシュンッとおやつを取り上げられた柴犬みたいに落ち込むから……。