甘い記憶を溶かしたら
 耐えていたが無理だった。

 我慢できずに私はその場で吹き出してしまった。

「あー! 遠野さんに笑われたぁ! 昴のせいだ!」
「どうして俺のせいになるんですか」
「昴が俺のこと公共の場で怒ったりするから!」
「怒ってませんよ。お願いしてるだけです」
「俺の上司の顔潰さないで! 遠野さん初日なのに俺のイメージついちゃうじゃん!」

 ――だめ、無理。

「ふふっ」

 結局我慢できずに吹き出してしまった私。それでもふたりは笑った私を怒ることもなく笑顔で迎え入れてくれた。

「ご挨拶が遅れました。遠野さんの指導係を務めさせていただきます、森下です」
「は、はい。遠野叶美です! 本日からよろしくお願いいたします!」

 ――森下? 森下昴? じゃあやっぱり……。

「こちらこそよろしく。なにかあったら俺に声かけてください」

 そう言って微笑んでくれた指導係のその人は……高校の時に憧れていた初恋の先輩だった。
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