甘い記憶を溶かしたら
「おつかれさま」
「あ……おつかれさまです」

 入ってきたのは昴先輩。
 口の中でゴロゴロ転がる飴をなんとかしたいが舐めたところだ。噛み砕くにはなかなか難儀な大きさ、どうやっても誤魔化しきれない。

「なんか食ってる?」
「す、すみません!」
「いや、別に定時回ってるし気分転換大事……ってそれ」

 それ、と視線がいくその先にはデスク上に置かれたビー玉檸檬。

「その飴懐かしいね」
「え?」
「あ、覚えてない?」

 ――そんなわけない。

「昴先輩は私のことなんか覚えてないと……」
「先輩やめてよ」
「でも私にとってはずっと憧れの……っ!」
 
 思わず口を手で塞いで赤面、それを見た昴先輩も目をパチクリさせるもののフッと極上の笑顔をこぼした。
< 18 / 35 >

この作品をシェア

pagetop