甘い記憶を溶かしたら
 ――嘘でしょ? 私のことだけじゃなくて飴のことまで覚えていてくれてるの?

「そんなことより何してるの? まだ帰らないの?」
「あ……私、仕事早くなくて。ミスもないかなとかこれでいいのかなって思ってたらキリがなくて。やればやるほど目につくというか、沼っちゃって」

 要領が悪い、私のダメなところだ。頑張りたい気持ちばかり先行して空回ることが多くて結局上手くいかないことが多い。ここではそんな失敗したくなんかないのに。

「私なんかのデザインも本当にこれでいいのか、見るほど不安ででも触るほど不安が増して……大丈夫かなって」
「そんなに気負わなくてもいいのに」

 ――え?

「投げてみたらいいじゃん」
「え、でも」
「なんのために俺がいるの?」

 その言葉に胸が跳ねた。

「大丈夫だよ」

 そう言って頭にフワッと落ちてきた温かな手のひら。見上げる私を優しく見つめてくれる昴先輩の瞳に吸い込まれそうで。

「ひとりで抱え込まずに俺に相談してよ。一緒にやってるんだしさ」

 ひとりで頑張ってきた私の胸を刺すには十分すぎる言葉だった。
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