甘い記憶を溶かしたら
 ズバリ言い当てられたらポロポロと涙がこぼれて頷くしか出来ない私がいた。

『……こんな風に泣かして追いかけてもこないアイツ駄目だな。俺が怒っとくね』

 そんな風に優しい声をかけてくれて頭をポンッと温かい手のひらで撫でられた。

『これあげる』

 そう言って差し出してくれたのはあのビー玉檸檬。

『俺の好きな飴。でかいから舐め終わった頃には気分変わってるかも』

 くしゃっと笑った顔が夕日に照らされて眩しくて、でもその温かくて優しい笑顔に胸はキュンと締めつけられた。憧れている人、でも年下で弟の友達ポジションな私は昴先輩の特別になれるなんか思えなかったからこの恋は胸に秘めた片思い……そう思っていた。
 差し出された飴の封を切り、泣きながら素直に口に入れて舐めた飴はゴロゴロして甘酸っぱくて、でも優しい檸檬の香りが口の中から体中に染み渡る。

『美味しい』
『好きなんだ』
『……』

 それはこのビー玉檸檬が、そんなことわかっている。でも見上げて潤む視界の中で微笑んでくれる昴先輩は私の胸をときめかせ続ける。

『元気出して』
 
 それが私の青春の……初恋の味。ビー玉檸檬は私の初恋の飴だ。
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