甘い記憶を溶かしたら
「好き、なんです……好きでした」
「……」
「また、好きになりました」
「……」
「好きでいても、いいですか」

 言えなかった告白が時間を飛び越えて言葉になって、ほろ苦さが口の中に広がるほど心の中に抱えていた過去の思いが溢れてきたら甘さによって溶け出してしまう。

「好きで……いたいです」

 あの頃言えなかった。そばにいたかった。想いを本当は伝えたかった。昴先輩をもっとそばで見つめていたかった。

「……なんで、言うの」
「え」
「ちょっと……待って。いきなり言われると思わなくて……ごめん」

 ごめん、その言葉を真正面から受け止めたらごまかせないような胸の痛みと頭を鈍器で殴られたようなショック。

 ――そりゃそうだよね……仕事もこれからやっていかないとダメなのに告白なんかされて迷惑に……。

 悶々と脳内がマイナス思考に襲われていたらグッと顔を持ち上げられて脳みそが揺れた。昴先輩のあったかい手のひらに両頬が包まれて真っ直ぐ見つめられている。

「違うよ」

 何がだろう。何が違うのか。その気持ちを表情で読み取ってくれた昴先輩は困ったように眉を寄せて微笑んでいる。

「俺から言いたかったの」
「え……」
「先に言わないで」

 そういう昴先輩のくちびるがゆっくりと近づいてきて……。
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