甘い記憶を溶かしたら
 肌に息がかかるほど近い。

「俺もまだ食べてないんだよね。完成品」

 ――え?

「食べさせて」
「え……んっ」

 その言葉を理解する前にキスされた。

 そっと、唇を重ねられる優しいキス、飴を咥えたままの甘いキス。私の口の中で溶け出した飴と、昴先輩のくちびるの熱が絡むとより熱を放ちその熱さに身体までも溶けそうになる。
 触れているだけの軽いキスなのに、熱がじわじわと伝わってくる。唇を合わせて、味を確かめるような長いキスは息を勝手に乱れさせた。

 ――こんなキス……おかしくなりそう。

 思考がまともに働かない。これは夢だろうか? この甘さに包まれてこれを身体が記憶したら私は……そう思っていたらくちびるがソッと離された。

「……思ってたより苦さが喉に残るな」
「……アールグレイは少しだけクセもあるから……」
「でも甘い」
「……はい」

 昴先輩が目の前にいる。視界いっぱいに埋まるほど近くで私を見つめてくれている。

「俺も好きだ」

 ――それは……。
 
「……この飴が?」
「なんでだよ」

 くしゃっと笑うくすぐったそうな顔がたまらなく愛しい。見つめるだけで胸がキュンとしてやっぱりどうしたって離れたくなくなった。
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