甘い記憶を溶かしたら
『炭酸ってお腹膨れちゃうしちょっと苦手なんですぅ~。ビールは苦いし余計無理かも。でも甘いのだったら少し飲めるのでそれでお付き合いしていいですか?』

 この間入ってきた契約社員の女の子がそんな風に言っていて可愛いなぁと素直に思った。歳がすごく離れているわけでもないのにどうしてだろう。あの苦手なことを恥ずかしそうに言ってうまく断る姿勢と出来ることで付き合おうとする精神、私にはあんな風に苦手なことを笑顔で言えない。

 飲めない時は場の空気を壊したらと思って無理して飲むか謝ってしまう。結局どっちも相手に気を遣わせてしまって落ち込んだり。

 気を遣っても下手くそ、なのに人付き合いが上手そうってどういうことなんだろう。私が誰よりも人付き合いを教えてほしいくらいだ。

 しっかりしてるねって言われる。空気が読めるとか、気が利くとか、いつもニコニコ笑ってるね、って。でも本当はこう思われたらどうしようとか、人目ばかり気にしているのに。

 そして案の定素敵な恋人がいるんでしょ? と誤解されているがおひとり様まっしぐら。彼氏はおろかデートした記憶だって……。
 
 ――そもそも彼氏いない歴何年だっけ? どこを見て彼氏がいると思うんだろうか。

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