シンユウノススメ
一通り別荘内のルームツアーを終えた。

ナオくんは自然に触れることが好きみたいで、別荘をグルッと取り囲んでいる森林に興味を持って散歩に出掛けた。
ムギとメイちゃんはちょっと疲れたから、昼食ができるまで少し仮眠を摂ることにした。

「ここ使ってね」

「どこを見ても感心しちゃう。このお部屋だけで家族全員暮らせそう」

「大袈裟だよ。一週間もあるからさ、プールでも遊ぼうね」

「うん!プールと雄大な庭付き別荘…自分がお嬢様になったみたいだね」

瞳をキラキラ輝かせて微笑むメイちゃんが可愛くて、この笑顔を守る為ならどんなことでもしてあげたくなっちゃう。

ナオくんさえ居なければ一週間ずっと、メイちゃんはムギだけのものなのに。

それでもナオくんの前で、見たことも無いような表情でメイちゃんが笑うから。
そのたびに、一番になれないムギの心臓はチクンって痛んで、
メイちゃんが幸せならって諦めてしまう。

将来、メイちゃんのこと以上に大切に想える人がムギにもできるのかな。
そんなのは想像もできない。

ナオくんの存在だって今はまだ「ムギとメイちゃんを引き裂く悪い人」だもん。
絶対に認めたくなんかない!
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