シンユウノススメ
「さすがに同情するな。香乃はなんも悪くないのに」

「でも私にとっては…麦ちゃんの家庭環境もいじめられてたことも好都合になった…。ほんとはね、放課後になったら麦ちゃんが屋上に行ってることも知ってた」

「だからその日も」

「うん。後をつけたの。本来、屋上のドアは施錠されてて生徒だけでは入れない。でも麦ちゃんってばピッキングって言うの?それで勝手に鍵をこじ開けられるようになってた」

「空き巣のセンスがあるなぁ」

「もう!変なこと言わないで。それで助けることになったんだけど。元々死んじゃうくらい追い込まれてた麦ちゃんに私のことを話したらとんとん拍子に思った通りに動いてくれて、麦ちゃんを助けることで私も生まれ変わることができた。だから菊池くんとだって出逢えたんだって思ってる。あの頃の私が菊地くんと同じ学校に通えてることは奇跡だから」

「じゃあ早く二人だけの幸せを手に入れなきゃな」

「うん。麦ちゃんには本当に感謝してるけど…麦ちゃんだって言ってたじゃん。″凄いのはパパなんだ″って。きっかけは麦ちゃんがくれたけど私を助けてくれたのは麦ちゃんのパパだもん。だったらもう…命を助けてあげたんだから許してほしい…」
< 27 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop