シンユウノススメ
「香乃さん?」
「…砂川さん」
小六で初めて同じクラスになった砂川芽衣子ちゃん。
喋ったことは無い。
ムギと喋ったりしたら迷惑かけちゃうから。
「何してるの危ないよ!」
「ほっといて」
「ほっとけないよ」
「いつもほっといてるじゃん!」
「それは…」
ムギのことなんて誰も助けてくれない。
教室にもどこにも存在していないように、そう思い込むように全員が努力している。
ムギの存在を認めてしまったら、今度は「自分の番」だから。
「…ごめん。砂川さんが悪いんじゃないんだよ。ムギだってみんなの立場ならそうすると思う。怖いもん。だから大丈夫だよ」
「香乃さんお願い、こっちに来て」
「大丈夫だってば。今日もとっくに失敗してるの」
「失敗?」
「今日も飛べなかった。ムギが死んじゃったらパパが悲しむから」
砂川さんが居るほうへとフェンスを乗り越える。
ちょっとずつ、ゆっくりと一歩一歩ムギに近づいてくる砂川さんは、
ムギがフェンスの上からぴょんって屋上のアスファルトに飛び降りた時、ムギをギュッと抱き締めて泣いた。
「…砂川さん」
小六で初めて同じクラスになった砂川芽衣子ちゃん。
喋ったことは無い。
ムギと喋ったりしたら迷惑かけちゃうから。
「何してるの危ないよ!」
「ほっといて」
「ほっとけないよ」
「いつもほっといてるじゃん!」
「それは…」
ムギのことなんて誰も助けてくれない。
教室にもどこにも存在していないように、そう思い込むように全員が努力している。
ムギの存在を認めてしまったら、今度は「自分の番」だから。
「…ごめん。砂川さんが悪いんじゃないんだよ。ムギだってみんなの立場ならそうすると思う。怖いもん。だから大丈夫だよ」
「香乃さんお願い、こっちに来て」
「大丈夫だってば。今日もとっくに失敗してるの」
「失敗?」
「今日も飛べなかった。ムギが死んじゃったらパパが悲しむから」
砂川さんが居るほうへとフェンスを乗り越える。
ちょっとずつ、ゆっくりと一歩一歩ムギに近づいてくる砂川さんは、
ムギがフェンスの上からぴょんって屋上のアスファルトに飛び降りた時、ムギをギュッと抱き締めて泣いた。