もう一度、君と恋をするために
次の階でエレベーターが止まり、さらに数人が乗り込んできた。

人と人との間隔が詰まり、私は身動きが取れなくなる。

思わず息を詰めたその瞬間、誰かの手が私の腕をそっと引いた。

悠一だった。

私は自然に、彼に導かれるようにして壁際へ。

そして彼は、私の前に立つようにして、他の人たちとの間にわずかな空間を作ってくれた。

まるで、私を守るように。

優しい。

こんなふうに優しくされるなんて、もうないと思っていた。

3か月前、私たちは別れた。

未来を分かち合うことを諦めた。

だから、もうこんなふうに守ってくれる理由なんて、ないはずだった。

胸の奥がじんわり熱くなる。

懐かしさと、嬉しさと、苦しさがいっぺんに押し寄せる。

やがてエレベーターがロビーに着き、私たちは無言のまま外へ出た。

外の空気は少し冷たくて、でも心はまだ揺れていた。

「……ありがとう。」

ぽつりと告げたその言葉に、悠一は何も言わず、

ただ私の肩を一度だけ抱き寄せた。

そして、そのまま背を向けて歩き出していった。

何も言わずに。
振り返りもせずに。

私の心だけを、そっと置いていった。
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