もう一度、君と恋をするために
「覚えてる? 会社の近くのバーで、朝まで飲み明かしたこと。」

グラスをくるくると回しながら、悠一がふと口にした。

「……うん。」

私も、自然と頷いていた。

あの夜のことは、忘れようと思っても忘れられない。

「気づいたら、朝になっててさ。外がもう明るくて……」

「でも、全然帰りたくなかった。」

私がぽつりと呟くと、悠一が目を細めて笑った。

「……俺も。」

その言葉に、胸が少しだけきゅっと締めつけられた。

あの頃は、一分一秒でも一緒にいたかった。

他の誰かじゃなく、悠一じゃなきゃダメだった。

「……悠一は、今でも覚えているのね。」

「忘れられないよ。……4年も付き合ったんだ。」

それだけの時間を共にした相手。

それなのに、今は他人のような距離がある。

こういう時、手を伸ばしてほしい。

その腕で、あの頃のように包んでほしい。
< 31 / 40 >

この作品をシェア

pagetop