もう一度、君と恋をするために
でも、今の私たちの間には、たしかに“見えない壁”が立っている気がした。

距離じゃなく、心の壁。

互いにまだ触れられない、“未来”のための沈黙。

だけど私は、もう一歩、踏み出してしまいそうだった。

「私たち、どうして……ダメだったのかな。」

気づけば、そんな言葉がこぼれていた。

静かなバーの照明の下、グラスの氷がかすかに音を立てる。

私には、わからなかった。

確かに、悠一との未来を信じていたはずだったから。

「俺が、結婚を決断できなかった。それだけだよ。」

悠一の声は静かで、でもどこか苦しそうだった。

彼のほうを見つめると、その瞳は、言葉よりも優しく私を包んでくれた。

「……決断させられなかったのは、私のほう。」

そう言うと、悠一は首を横に振った。

「違う。俺、あのとき主任になるかならないかで、いっぱいいっぱいだった。結婚するなら、ちゃんと昇進して、安定した生活を……って、焦ってた。それで、余計に自信がなくなって……結果、君を手放してしまった。」

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