もう一度、君と恋をするために
もう言葉はいらなかった。

この想いは、きっと今も、変わらずここにある。

気づけば、外はもう雨が上がっていた。

店を出た私たちの足元を、アスファルトの濡れた光がやわらかく照らす。

湿った夜の匂いに、心が少しだけ落ち着く。

「……タクシー、あそこだな。」

悠一が静かに言って、私の腰に手を回した。

ゆっくりと、自然に歩き出すその仕草に、思わず戸惑ってしまう。

こんなふうに、腰に手を添えてくるなんて。

付き合っていた頃は、そんなこと一度もなかったのに。

「……いつの間に、こういうの覚えたの?」

声には出さなかったけれど、心の中でそう呟いた。

恋が、上書きされていく。

私の知らない悠一の仕草で、

私の知らない優しさで、私の心が、また彼の色に染まっていく。

「……あっ、よかった。タクシー空いてる。」

そう言って、悠一が運転席側の窓を軽くコンコンと叩いた。

その後ろ姿を見ながら、私はまた、ひとつ確信した。

やっぱり、私の心はまだ――この人を求めてる。

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