もう一度、君と恋をするために
18時。社内放送が定時を告げるチャイムを流した。

ふと顔を上げると、悠一がスーツの袖を整えながら、さっと自分の荷物をまとめているのが見えた。

ああ、帰るんだ。

その動きだけで、今日も一日が終わったんだと実感する。

……それも、彼の存在を通して。

付き合っていた頃は、私が少し仕事を引き延ばしてでも、時間を合わせて一緒に帰っていた。

エレベーターを待つ時間も、駅までの数分も、どうでもいい話で笑って、明日の予定をすり合わせて。

それが当たり前だった。

「日向って、もう桐谷と帰んないの?」

何気ない同僚の一言に、ドキッとする。

隣の席で聞いていた私は、思わず手を止めた。

悠一は笑いもせず、淡々と答える。

「……お互い、もう大人だからね。」

その言葉と、彼の後ろ姿がリンクする。

余裕のある歩き方。慣れたような態度。
< 7 / 40 >

この作品をシェア

pagetop