もう一度、君と恋をするために
「……はぁ」

ため息がこぼれた。

もうとっくに吹っ切れたはずだった。

別れを選んだのは自分の意志だった。

未来の見えない関係に、これ以上留まってはいけないと思ったから。

──でも。

「そんなに私と結婚したくないの⁉」

あの夜、耐えきれずに言ってしまった言葉が蘇る。

その時の悠一の顔。

何かを諦めたような、でも苦しみをこらえているような──

あの、どうしようもなく寂しそうな表情が、脳裏に焼きついている。

私が欲しかったのは、“言葉”じゃなくて“覚悟”だった。

でも、彼が欲しかったのは、私の“今”じゃなく、“いつか”だったのかもしれない。

わかってた。

だけど、受け入れられなかった。

画面に映る“幸せだった私たち”を、そっと指でなぞって、写真を閉じる。

過去を懐かしむだけで済むなら、こんなに苦しくないのに。

やっぱり私はまだ、忘れられていないんだ。

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