夢の続きを、あなたと
 雄馬のまとめ上げた今後の展望は、とても魅力的だ。
 家具職人としてのアトリエを、雄馬の故郷である和歌山に構えるとあった。
 都会に比べて土地も安く、アトリエの周囲も山林に囲まれた山の中だから、作業に集中できる環境だ。
 和歌山の材木は紀州材が有名で、県の77パーセントを森林が占めているという。

 古くから「紀州・木の国」と呼ばれ、優れた木材を生み出す林業地として位置づけられている。
 地元の木材を使った家具を完全受注で生産する。

 雄馬の企画書を最後まで目を通し、私はふと気が付いた。
 これ、職人は雄馬ひとりだけだ……
 家具職人をしながらこれらを作るのは、無理があるのではないだろうか。

 企画書から顔を上げると、雄馬が真剣な表情で私を見つめていた。

「これは俺からの提案なんだけど……。美月、もう一度、職人の道を目指してみないか?」

 雄馬の言葉に、私の頭の中が真っ白になった。
 私が、職人になる……?

 驚きのあまり、手にしていた雑貨を落としそうになったけれど、どうにかそれは免れた。
 箱の中にそれらをそっと戻すと、私は改めて雄馬に返答する。

「私が職人って、冗談でしょう? 私は今、会社員だよ? ブランクだってあるし、雄馬みたいな技術、私にはないよ」

 私の返事は想定内だったようで、雄馬は私の言葉を肯定しながらも言葉を続けた。

「いや。美月だって、卒業制作の作品に、審査員特別賞をもらった実績があるだろう? 女性だからという理由の理不尽な対応や、安定を求めて会社員になったあの頃の美月の気持ちが嫌ってほどわかるから、本当はこんなことを言うつもりはなかった。でも敢えて聞く。美月……、今の仕事、楽しいか?」

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