夢の続きを、あなたと
 雄馬に私の心の中を見透かされているようで、即答ができない。
 私たちはしばらくの間見つめ合っていたけれど、その沈黙を破ったのは雄馬だった。

「昨日持ってきた美月の企画書、俺のやりたかったことそのものだ。この工房は、見ての通り狭いし受注している家具の生産も追い付いていない。よって、基本的に廃材のリメイクで雑貨を作る余裕はない。リメイク作品を作るために廃材置き場を確保したとしても、すぐに廃材でスペースが溢れてしまう」

 雄馬の言葉に、私は頷いた。

 廃材のリメイク、昔ながらの「もったいない精神」は、今も昔も根付いている。
 しかし、そうやって廃材をいつまでも処分できないでいると、工房も資材の置き場に困るのだ。

 現にこの工房も、たくさんの職人たちが、アトリエの中を所狭しと作業に取り掛かっていることが窺える。
 世界にひとつだけの手作り家具工房は、オリジナルにこだわりのある人たちに支えられているのだ。

 手の空いた職人がいれば、企画は通るかもしれないということだ。
 でも、そのために私が職人になるとなれば、就業規則で副業を禁止されているため、会社を辞める選択しかない。

「俺、さっきも言ったように、来年ここから独立して和歌山へ戻る。……美月、よかったら俺と一緒に和歌山で家具職人……、廃材を使ったリメイク作品で雑貨作り、やらないか? 職人としてのブランクだって、一度身体が覚えた技術だ、仕事をしていたらすぐに思い出すよ」

 突然のヘッドハンティングに、私は何と言葉を返したらいいかわからない。
 会社を辞めて、雄馬と職人になる……?

< 21 / 34 >

この作品をシェア

pagetop