夢の続きを、あなたと
 私の言葉を聞き終えた曽我さんは、腕組みをしたまま黙り込んだ。
 しばらく考え込んでいた曽我さんが、その重い口を開く。

「俺は梶田さんの技術がどの程度なのかを知らないから何とも言えないんだけど……。就職してからのブランクを加味しても、冗談なんかで梶田さんをスカウトしたりはしないよね……」

 曽我さんの言葉に、私は頷いた。

「職人は、基本一人で没頭する作業です。私は、昔からものづくりが大好きでした。将来、職人になる夢を抱いて専門学校に進学しましたが……、狭き門だと痛感せざるを得ませんでした」

 私の言葉を、曽我さんは静かに聞いている。

「もし、彼の提案を受けて職人の道に戻るとすれば、私が廃材を使った雑貨を作ることになるので、アルファクラフトに商品を卸すことは可能になります。本庄さん……、昨日話をした同級生も、リメイク雑貨の販売については乗り気で、口約束ではありますが契約を取り付けております。でも、そうなれば……、私は和歌山を拠点に活動をすることになります。副業禁止のこの会社を退職しなければなりません」

『退職』の言葉に、曽我さんはしばらく考え込む。

「それって、廃材を安く仕入れて、梶田さんがここで作品を作るってことはできないのか? 退職したら、梶田さんも経済面でいろいろと大変になるんじゃないか?」

 曽我さんの言うことはごもっともだ。
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