夢の続きを、あなたと
 私はそう言いながら名刺入れの中から自分の名刺を一枚取り出し、雄馬へ差し出した。

「アルファクラフト……!?」

 雄馬は私が社名を名乗ると驚いて名刺に目をやると、社名と肩書きを確認した。

 雄馬はしばらくそれに視線を落としていたけれど、自身もポケットの中から名刺を取り出して交換すると、私を中へ案内する。
 アトリエの隅にある応接セットへ案内し、私に着席を促すので、私はそれに従ってソファーへ腰を下ろした。
 
「まさかずっとアポをくれていたアルファクラフトのバイヤーが美月だったとはな……。飲み物、自販機のものしかないんだけどいいか?」

 雄馬は私の返事を聞く前に、名刺を応接セットのテーブルの上に置くと、工房の中に設置してある自動販売機へ向かった。私は、その後ろ姿を眺めている。
 お構いなく、の言葉が、喉の奥で引っ掛かって口から出ることはなかった。

 雄馬の名刺の肩書きには、『企画プランナー兼木工職人』の文字が書かれている。
 私もあの時、雄馬と同じく家具職人の道を選んでいたとしたら……
 
 雄馬が両手にペットボトルのお茶を持ってこちらへやって来る。
 そしてそのうちのひとつを私に差し出した。

「美月の好きなやつ、これだったよな」

 いつの間にか雄馬の口調が砕けてあの頃に戻ったようだ。
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