夢の続きを、あなたと
 その言葉が、凪いでいた私の心に波風を立てる。
 もう、あの頃の気持ちを、あの頃の思い出として昇華できていると思っていた。
 けれど、雄馬の姿を見ると、それは全然できておらず、あの頃のくすぶっていた思いが蘇る。
 
「覚えていてくれたんだ……」

 やっとの思いで差し出されたペットボトルを受け取ると、私はペットボトルに巻かれているフィルムを見つめた。
 あの当時、私は好んでこのジュースを飲んでいた。

「覚えてるよ。……ずっとアポ取りのメールをくれていたのに、返事を待たせて悪かったな」

「ううん、全然。手作りの家具工房だもん、ひとつひとつが手作りでしょう。こちらこそ忙しい時期に何度もメールしてごめんね」

 雄馬がジュースを飲むよう促すので、私はキャップの栓を開封し、ひと口、口をつけた。
 口の中に広がるジュースは、学生時代の思い出と同じく甘酸っぱい味がする。

 私は雄馬と別れてから、このジュースを口にすることはなかった。
 ジュースを飲むと、雄馬との思い出がよぎる。
 楽しかったあの頃を、いやでも思い出すのだ。
 雄馬と過ごした時間は、二十九年生きてきた私の人生の中で、一番輝いていた。
 きっと、雄馬以上に愛せる男性なんて、今後私の前に現れないだろう――

「いや、こちらこそ。代表から話は聞いてる。代表は今、納品に出てるから俺が対応させてもらうよ。少人数で工房を回しているから、アルファクラフトさんから連絡をもらった時は、家具の納期が近くてみんな殺気立っていて……。今日までアポを引き延ばしてしまって申し訳ない。……で、用件は」

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