夢の続きを、あなたと

『あの頃は若かった』と、昔を懐かしむ大人たちは言うけれど、自分もそんな言葉を口にする年齢になったんだと、年月の経過を実感する。

 職人になる夢を諦めてから、間接的とはいえ未練がましく職人が作る作品に関わる仕事を選んだ私は、毎日むなしかった。

 たしかに給料面では不安はない。けれど、やりがいなんてまるで感じない。
 企業側は男女平等を謳っているけれど、結局はどこへ行っても女性の地位は確立されていない。

 出る杭は打たれる、それに嫌気を差した女性たちが脱落していく。
 職人の世界は特にそうだ。

 木工職人という道は、昔から主に男性が活躍する世界で、女性には狭き門だった。
 
 専門学校は同じ思いを抱いた同志たちの集まりだから、学校内では特に何も感じなかったけれど、学校から一歩外に出ると、未だ男尊女卑の偏見が強い。

 年に数回行われる制作の展示会に訪れる外部の人からは、作品に対する賛辞の裏で、『女のくせに男社会の中に入ってくるなんて生意気だ』という心無い声も聞こえることが多かった。

 同級生の中でも木工を専攻する女子学生は数が少なく、そのような偏見など気にすることなく、自分のやりたい道を進むためみんなが切磋琢磨していた。
 私もその中のひとりだ。

 雄馬とは、同じ木工を専攻した仲間で、話題の中心になるような活発な人のそばで、いつも穏やかな笑顔で人の話を聞く人間だった。
 そんな雄馬のそばは居心地がよく、私は彼に魅かれていた。
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