さっちゃんの足跡

5. 小学1年生

 「吉村幸子さん。」 「はい。」
今は入学式。 さっちゃんは小学生になりました。
ママは講堂の後ろのほうからさっちゃんを見守っています。 心配そう。
 実は市役所から「あなたのお子さんは視力障碍が有るから盲学校に入学してください。」と言われて悩んでたんです。
聞いてみると盲学校は家から2時間ほど行った所に在るらしい。
それでは家から通うのは無理。 本当は地域の小学校に行かせたかったんだけど、、、。
 そこには馴染みのお母さんが事務員として働いてるし友達の子も同級生になれるから。
でもそれは叶わなかった。
 手帳を交付されて身体障碍者認定をされてしまったから。
 「さっちゃんは目が見えないだけなんだよ。 他にはみんなと同じなのに何でダメなの?」
ママはしばらくそんなことばかり考えていて寝れなかったらしい。
 それでも入学させないわけにはいかない。 そこでお世話になることになる寄宿舎へ行ってみた。
寮母さんが話を聞いてくれた。 「そうです。 みんなそうなんです。 だから私たちも身体障碍者だとは思ってません。」
その返事をママは意外だと思った。
 違うのは見えないってことだけなんです。 だから私たちは見えなくても苦労しないように指導しています。」
食事の様子も見せてもらった。 (なるほどね、、、。)
 職員があれこれと世話するのは最初だけ。 席に着いて食事をしたら食器を下げる。
そして自分の部屋へ帰る。 ある程度まで指導したら後は見守ってるだけ。
その中でみんなが生き生きと暮らしているのが見えた。
 ママはさっちゃんに聞いた。 「これから知らない人たちと一緒に暮らすけど大丈夫?」
「今までもそうだったんだから大丈夫だよ。」 その返事にママは思った。
やるしかないんだなって。
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