あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 その日の夕方、定時も過ぎフロアに残る社員も少なくなった頃、やっとパソコン画面から目を離した菜月は、ふと視線を感じて顔を上げた。

 横を見ると、こちらにじっと顔を向けている凌平と目が合ってしまう。

 いつの間にかこの部屋には、菜月と凌平だけになっていたようだ。

 初日の挨拶以来まともに凌平と会話をしていなかった菜月は、ドキッとして慌てて顔を逸らす。

 そんな菜月の様子に、凌平はくすくすと笑いながら菜月の側に寄った。


「やっぱり綾瀬は変わってないな」

 普段のリーダーの顔つきとは違う凌平の表情に、菜月は戸惑いつつも、どこか期待を込めた顔を上げる。

「責任感が強くて、曲がったことが大嫌い。でも、心根が優しくて人を思いやれる……」

「もう、褒めすぎ!」

 凌平の優しすぎる声色に、思わず菜月は言葉を被せるように言ってしまう。

「確かに、褒めすぎだな」

 二人は顔を見合わせた後、肩を揺らして笑い出した。

 あははと凌平の笑い声が、室内に心地よく響く。

(あぁこの笑い方、昔のままだ)

 こうしていると、つい高校生の頃に戻ったように錯覚してしまう。
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