あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
(え……? どういう意味?)

 すると不思議そうに顔を上げた菜月の前に、凌平が真っすぐな瞳を覗き込ませた。

「正直、見違えたよ。綺麗になったな……」

 その瞬間、菜月の心臓がドクンと動く。

 凌平は、まるで愛しいものでも見るように瞳を細めると、口元でそっと弧を描いた。


『佐々波リーダーって、ずーっと想ってる女性がいるんじゃないかなぁって』


 菜月の脳裏に、宮本の言葉が響く。

(こんなの、勘違いしちゃうじゃない……)

 菜月は頬を染めると、戸惑ったように顔をうつ向かせた。

 なぜ凌平は、こんなにも優しく、菜月のことを見つめるのだろう。


「あの、凌平……」

 菜月が凌平を振り返った時、テーブルに置いてあった凌平のスマートフォンが大きく振動した。

 パッと移った画面には、国際電話らしき番号が表示されている。

「悪い、仕事の電話だ。ちょっと出てくる」

 凌平は急に表情を変えてそう言うと、スマートフォンを耳にあてながら部屋を出て行った。


 菜月は凌平の背中を見送りながら、まだドキドキと激しく鼓動を刻む胸元をぎゅっと握り締める。

 こんな気持ちは久しぶりだ。
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