あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
(私もしかして、また凌平に……?)

 そう自分に問いかけながら、菜月は静かに顔を上げる。


 高校三年生のあの日、菜月は凌平に惹かれる自分の気持ちに蓋をした。

 そしてその日を境に、菜月と凌平は一切言葉を交わすことはなくなった。

 いつの間にか、二人の間には埋められない溝ができ、それは受験という大きな波を越えた後も埋まることはなく、そのまま菜月は逃げるように県外の大学に進学した。


(凌平はあの頃のこと、どう思ってるの?)

 菜月が入口の辺りを振り返った時、外に出ていた凌平が厳しい顔つきで戻って来るのが見えた。

 凌平はチラッと、どんちゃん騒ぎをしている笠井たちに目をやっている。

 その目線から、電話の内容にピンときた菜月は、慌てて立ち上がると凌平の側へ駆け寄った。


「さっきの電話。もしかして、何かトラブルが起きたんじゃない? 私で手伝えることある?」

 菜月がそっと耳打ちすると、凌平は驚いたような顔で菜月を見つめる。
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