あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 菜月は顔を上げると、凌平の瞳を見つめる。

「もしかしたら、停電の影響でサーバーがダウンしてるのかも」

 菜月の声に、凌平もはっと顔を上げた。

「そうだとしたらまずいな。すぐに戻って確認しないと」

 二人が深刻な顔でうなずいた時、店内ではより上機嫌な社員たちの声が聞こえてくる。

 振り返ると、奥の席では笠井たちシステム部の社員が、宮本や他の社員と大声を上げながら、日本酒の徳利(とっくり)を振っているのが見えた。


「あいつらに頼むのは無謀だな。綾瀬、すまん。手伝ってくれるか?」

 眉を下げる凌平に、菜月はにっこりとほほ笑むと、ぐっと小さくガッツポーズを見せる。

「もちろん、任せて。そのための出向社員なんだから、どんどん頼って良いんだよ」

 ドンと自分の胸を叩く菜月に、凌平はあははと声を上げた。

「やっぱり、綾瀬らしいな」

 優しくほほ笑む凌平に、菜月の心臓は再びドキドキと早足で叩き出す。

 菜月はそんな心をぐっと押さえこむと、凌平と共に居酒屋を後にした。
< 27 / 51 >

この作品をシェア

pagetop