あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 日々、お客様の会社で一緒に勤務しながら、システムに関する修正やリクエストに対応したり、トラブル時には即座に動ける体制を取っている。

 菜月は今までいくつかの日本企業に出向して経験を積んできたが、今回初めて外資系企業への出向が決まったのだ。


「外資系ってことは、まさか社内言語は英語……ってことはないよね? そこ先輩から聞いてなかったぁ」

 事前の調査不足だった自分に反省しながら、エレベーターを降りた先で受付に声をかける。

 感じの良い受付の女性に案内されて、たどり着いたのは“新規事業開発室”というプレートの掲げられた一角だ。


 外資系の企業だからかフロア全体はオープンな印象で、ここも一応ガラス張りの壁で仕切られてはいるが、外の他部署も見渡せる造りになっている。

 デスクは上長のものであろう大きなものが一台と、その並びに島状に向かい合ってパソコンの置かれたデスクがいくつか置かれていた。

 脇にはダイニングテーブルほどの大きさの、休憩も兼ねて自由につかえる作業台も用意されているようだ。
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